「元祖」や「発祥」という言葉の、まぶしさと危うさ。 江戸後期の文芸作品と現代カルチャーのあいだに「似ている」瞬間を見つけることは楽しい。 ところが、それを安易に「起源」や「萌芽」として直線的につなげてしまうと、 その間に存在した媒介・変容・再解釈の層が見えなくなる。 本号では、「阿公＝阿麻和利女性化」を起点に、 近年の様々なエンタメ作品で見られる“史実男性キャラの女性化”現象―― たとえば『あんぱん』『文スト』『キングダム』など――を参照しつつ、 「似ていること」と「受け継がれていること」を分けて考えます。 また、馬琴が晩年に唱えた「稗史七則」を、若年期の作品にまで遡及して適用することの危うさにも触れ、 『八犬伝』を基準に初期作品を理解してしまう近代以降の“誤読の構造”を照らし出します。 ――過去を「源流」として消費せず、複層的な文脈の中で読み直すために。 これは「阿公の女性化」を再評価する前に立ち止まる、小さな批評的スケッチです。 ※本誌には一部、歴史的背景に基づくセンシティブな記述があります。 モノクロ15ページ（本文テキスト中心） 発行日：2025年10月 著者・編集：せっぱつまりこ（文化・文芸ライター／学術修士） テーマ：“元祖”をめぐる直線化と消費――『弓張月』から現代エンタメまで 発行形態：個人制作ZINEシリーズ MoonLightHouse 第2.5号

かつて琉球王国の尚王朝に滅ぼされ、ネガティブなイメージで語られてきた勝連城主・阿麻和利を、英雄として再評価した伊波普猷。 だが、その阿麻和利を源流とするとされる『椿説弓張月』に登場する琉球人巫女・阿公の姿を、伊波はなぜ語らなかったのか。 第1号で描いた阿公像の背景を、今度は近代沖縄学の沈黙から照らします。 伊波が阿麻和利像を再構成する際に抱えた葛藤をたどりつつ、 その沈黙の背後に潜む「性別」「他者へのなぞらえ」「近代知の限界」を読み解く試み。 阿麻和利から阿公へ―― 語られなかった〈似姿〉の系譜を追う批評的探求。 ※本誌には一部、歴史的背景に基づくセンシティブな記述があります。 モノクロ16ページ（ホチキス中綴じ) 発行日：2025年10月 著者・編集：せっぱつまりこ（文化・文芸ライター／学術修士） テーマ：『椿説弓張月』における琉球人巫女像のルーツとされる古琉球時代の地方国の王の近現代での再評価 発行形態：個人制作ZINEシリーズ MoonLightHouse 第2号

『MoonLightHouse』は、文芸と文化のあいだにある「語られなかった声」を拾い上げるZINEシリーズです。 第1号では、曲亭馬琴『椿説弓張月』に登場する琉球人巫女をめぐり、 彼女がいかに「異国」「女性」「他者」を象徴する存在として描かれたのかを読み解きます。 作者・馬琴が描いた琉球人巫女像の背景には、当時の「琉球ブーム」と、 他者を想像し物語化する近世社会の力学が潜んでいました。 本号は、物語に沈黙させられた声をすくい上げ、 文化とジェンダーの交錯点から『弓張月』を現代的に読み直す試みです。 学術研究の知見を基に、誰もが読みやすい批評文体で構成。 「物語が誰を語り、誰を語らなかったのか」を問う第一歩の一冊です。 ※本誌には一部、歴史的背景に基づくセンシティブな記述があります。 モノクロ19ページ（ホチキス中綴じ） 発行日：2025年10月 著者・編集：せっぱつまりこ（文化・文芸ライター／学術修士） テーマ：『椿説弓張月』における琉球人巫女像の特異性と物語上の位置付け 発行形態：個人制作ZINEシリーズ MoonLightHouse 第1号